骨髄の難病に臍帯血 奈良の病院移植主治医「バンクに理解を」

奈良市の高の原中央病院で先月、骨髄の難病を患い臍帯血移植を受けた男性(55)が退院した。同様の難病で臍帯血移植を受けられる例は国内ではまだわずか。主治医は「臍帯血は血縁者以外からも移植できる。臍帯血バンクへの理解を広めたい」と話している。
男性は京都府南部に在住。主治医で京大医学部臨床教授の澤田仁・血液内科部長によると、男性は骨髄が線維化し、赤血球や血小板などの血液細胞をつくれなくなる「骨髄線維症」という難病。高齢者に多く、5年生存率は68.6%(難病情報センター調べ)。進行して白血病になると平均余命は約3ヶ月という。
根治には、血液細胞をつくる「造血幹細胞」の移植が必要となる。拒絶反応を起こしにくい血縁者から移植を受けるのが一般的だが、男性には血縁者のドナーがおらず、「東海大学臍帯血バンク」(神奈川県伊勢原市)から提供された臍帯血を2月に移植した。約半年にわたる治療の間、輸血を22回受け、移植した造血幹細胞が機能していることが確認されたという。男性は退院後、通院しながら仕事に復帰している。

臍帯血には骨髄と同様、造血幹細胞が多く含まれている。通常は出産後に捨てられてしまう「へその緒」。骨髄移植に比べ、ドナーに痛みがなく、移植の準備にかかる時間も3分の1程度だ。ただ、保存には衛生面で厳しい条件があり、県内で産婦が臍帯血を提供できる医療機関はいまのところない。
臍帯血移植は比較的新しい治療法だ。日本造血細胞移植学会全国調査報告書(09年3月版)によると、男性のような骨髄の難病で臍帯血移植を受けた件数は91~07年でわずか14例。澤田部長は「少子化などで今後は血縁ドナーが少なくなり、臍帯血移植への期待は大きい。臍帯血バンクや血液センターへの理解を広めたい」と話している。
「朝日新聞 2009年8月29日」
血液内科のページへ
トピックス
