血液内科のご紹介・・・澤田仁(血液内科部長)

液疾患は症状として、貧血、出血、発熱、リンパ節腫脹などから発見されることがあります。実際には、貧血は動悸、息切れ、顔色不良などがみられますが、若い女性の鉄欠乏性貧血のように自覚症状に乏しく、検診時の血液検査ではじめてみつかることも稀ではありません。出血は、鼻出血、歯ぐきからの出血のほか皮下出血がみられることがあります。発熱は風邪や扁桃腺炎などで一般に認められる症状ですが、その原因として白血球の減少や機能低下を引き起こしている基礎疾患が存在する場合があります。

ンパ節腫脹は感染症が原因であることが最も多く、若い人ではウィルス感染による頚部リンパ節腫脹や扁桃腺の腫れなどの80%は良性疾患であるといわれています。しかし、中年以降になると悪性リンパ腫などの悪性疾患が多くなってきます。貧血は赤血球数、ヘモグロビン濃度の減少、出血は血小板や血液凝固の異常、発熱は白血球の異常である可能性があります。血液内科はこれらの貧血、多血症、白血球増加・減少、血小板増加・減少、リンパ球の異常など血液の異常を来す疾患を扱っています。血液疾患には良性疾患と悪性疾患があり、例えば若い女性の鉄欠乏性貧血はがんによる貧血のことがあります。これらの病気に対する治療成績の向上はめまぐるしいものがあり、毎年医療情報は変化しています。血液内科ではこうした最新の医療情報と技術をもとにして個人々々に最適の治療を推進します。

血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫など血液悪性腫瘍は年々増加しており、1999年のがんの統計では全悪性腫瘍の約6%で乳癌や子宮癌の死亡率に近くなっています。しかし、血液悪性腫瘍は化学療法や造血幹細胞移植で治癒が可能な人も少なくなく、早期の適切な治療が望まれます。

院、血液内科では2001年1月の創設以来、2ヶ月で約30名の血液疾患の方々を診療しています。また、京都大学、奈良医科大学、近畿大学病院の血液専門医と定期的にコミュニケーションをもちながら治療をすすめています。以下に診療領域としての血液疾患と最新の治療情報を紹介します。

【血液疾患】

1. 貧血 鉄欠乏性貧血、溶血性貧血、再生不良性貧血、骨髄異形成症候群、巨赤芽球性貧血、赤芽球癆
2. 腫瘍性疾患 急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、骨髄線維症、真性多血症、本態性血小板血症
3. 血栓性血小板減少性紫斑病、播種性血管内凝固症候群

【血液疾患の新しい治療法】

1.造血幹細胞移植

本における急性骨髄性白血病の化学療法による完全寛解率は80%を超えていますが、長期無病生存率は30~40%です(※1)。第1寛解期の急性骨髄性白血病のHLA適合同胞間骨髄移植の成績は5年生存率で66%となっています(※2)。

骨髄バンクより行われたHLA適合非血縁者間骨髄移植の5年生存率も、第一寛解期に移植がおこなわれった場合、66%と良好な成績になっています〔※2)。また、自家末梢血幹細胞移植も強力な化学療法として行われ、やはり第一寛解期急性骨髄性白血病では5年生存率66%です(※2)。自家末梢血幹細胞移植は予後良好な染色体を持っている人に限れば5年無病生存率は92%になっています(※3)。最近では、日本造血細胞移植学会によると移植施設間の治療成績の差は少ないとされています。

縁者あるいは非血縁者から造血幹細胞を移植する同種移植はこれまで幹細胞を骨髄から得る骨髄移植が主でしたが、造血因子を使用することによって末梢血より採取する同種末梢血幹細胞移植が行われ、われわれも成績を報告してきました(※4~6)。最近、副作用の多い強力な移植前処置を用いず移植後のドナーリンパ球の免疫反応によって腫瘍細胞を殺すミニ移植が行われつつあります。造血幹細胞移植はこのように自家移植、同腫移植とも盛んに行われつつあり、移植細胞も骨髄、末梢血、臍帯血などが用いられ、ミニ移植も含めて選択肢が広がってきています。

2.強力化学療法によらない新しい治療法

性前骨髄性白血病では分化誘導療法としてレチノイン酸を化学療法に併用することによってより高い寛解率と生存率がえられています。また、レチノイン酸に治療抵抗性になった急性前骨髄性白血病に対して砒素製剤の有効性も確かめられています。慢性骨髄性白血病はインターフェロンが用いられていますが、チロシンキナーゼ阻害剤が開発され治療法が大きく変わろうとしています。悪性リンパ腫ではキメラ型抗CD20モノクローナル抗体による抗体療法が注目されています。これらは、現在日本では未承認ですが、近く利用できるようになると思われます。

【内科医師】

- 文 献 -
※1 Ohno R et al:Randomized study of individualized induction therapy with or without VCR, and of maintenance/intensification therapy between 4 or 12 courses in adult acute myeloid leukemia. Cancer 71:3888,1993
※2 日本造血細胞移植学会全国データ集計事務局:日本造血細胞移植学会 平成12年度全国調査報告書2000年12月
※3 権藤久司:急性骨髄性白血病に対する自己末梢血幹細胞移植 医学のあゆみ 190:530,1999
※4 澤田仁ほか:血液疾患30症例に対する同種末梢血幹細胞移植 臨床血液39:1085,1998
※5 原田実根ほか:本邦における血縁者間同種末梢血幹細胞移植の全国調査:原状と問題点 臨床血液 40:1160,1999
※6 澤田仁ほか:同種末梢血幹細胞移植の成績と展望 日本輸血学会誌

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