§3 ライフサイクルで見た体のトラブル ~成熟期
【月経のトラブル】
月経に伴う不快な症状は多かれ少なかれ誰にでもありますが、月経が始まると同時またはその直前から強い下腹痛や腰痛・背痛・頭痛などの症状がでて、日常生活ができない位となり、寝込んだりする様な状態を月経困難症といい、治療の対象になります。月経が終ると症状は消えてしまいます。
出産経験のない若い人に月経困難症が多いのは、子宮頚管が細いため、月経血の流れがスムーズにいかず、子宮内にうっ血し、これを出そうとするプロスタグランディンというホルモンの作用で、子宮筋や血管が収縮し、強い痛みとして感じるものが多いと考えられます。
症状が強い時は鎮痛剤や漢方薬を投与します。抗プロスタグランディン剤の投与は効果的です。精神的なものもありますので薬を持っているだけで安心して使わなくて済む人もある様です。ストレスや不規則な生活、冷えも原因になることがあります。
子宮筋腫や子宮内膜症がある場合にも月経痛が強くなります。
最近、若い人にも子宮筋腫や子宮内膜症、子宮癌が増えてきています。月経困難症のある場合には、ぜひ産婦人科を受診されるようお勧めします。
【子宮筋腫】
成熟女性の5人に1人が持っているという良性の腫瘍で20~50歳前 後にみられ40歳代に多くみられます。子宮筋腫とは子宮壁の筋層にできる「こぶ」のようなもので、ほとんど は子宮体部に発生し発育の方向によって分類されます。
筋層内筋腫筋肉に囲まれている。
漿膜下筋腫子宮の外側に向かって大きくなる
粘膜下筋腫子宮内膜に向かって大きくなる。粘膜下有茎筋腫は茎が伸びて膣内にとび出すことがあり、これを筋腫分娩といいます。
[原 因]なぜ筋腫ができるか原因はまだ不明ですが、誰でも生まれつき子宮の筋層内に筋腫の芽のようなものをもっていて、それが、ある体質の人ではしだいに大きくなってくるようです。筋腫が大きくなるのには女性ホルモン、特に卵巣から分泌される卵胞ホルモン(エストロゲン)が関係していると考えられています。これはエストロゲンが多量に分泌される性成熟期に大きくなり、閉経後には発育が止まったり、小さくなることからわかります。
[症 状]筋腫の大きさや、発生部位によって違います。小さいものにはほとんど自覚症状がありません。最も多い症状は過多月経(月経血の量が多い)で、筋腫分娩では大出血を伴うものもあります。次に多い症状は月経痛で下腹部痛や腰痛を伴います。さらに大きくなると周りの臓器を圧迫して頻尿や便秘、足のしびれがあらわれることもあります。大きくても症状のないこともあり、筋腫のできている部位や大きさによって症状もいろいろです。
[診 断]内診でほぼ診断できますが、超音波診断法(エコー検査)、コンピューター断層撮影(CT)、磁気共鳴画像診断(MRI)にて確診します。
[治 療]根治療法は手術で筋腫をとってしまう以外ありませんが、症例によって 手術をしない場合もあります。
【手術が必要なケース 】
①自覚症状がなくても筋腫の大きさが、にぎりこぶし大以上の場合。②筋腫の大きさに関係なく、自覚症状(月経の量が多い、不正出血、月経痛、腰痛)が強い場合。
③貧血が強く、治療しても繰り返す場合。
④不妊や流産の原因と思われる場合。
⑤筋腫分娩。
⑥筋腫が変性したり、急に大きくなり、悪性(肉腫)が疑われる場合。
手術をする場合には、子宮を全部取ってしまう「子宮全摘出術」と、妊娠を希望する人には筋腫のみを取り出し子宮を残しておく「筋腫核摘出術」があります。手術をしない場合には、定期的(6ヶ月毎)に経過観察をしながら必要な人には薬物治療を行います。
薬物療法には症状をやわらげる「対症療法」と一時的に筋腫の発育をおさえたり、小さくすることを期待する「ホルモン療法」があります。対症療法には鎮痛剤、止血剤、造血剤を投与します。
ホルモン療法で筋腫をなくしてしまうことはできませんが、症状を改善したり、更年期に投与し閉経を早めることによって筋腫が大きくなるのを防ぐことを目的とすることもあります。
子宮筋腫になることを予防することはできませんが定期検診を受け、早期発見が大切です。
【子宮内膜症】
子宮の内側は子宮内膜という粘膜で覆われていて、この子宮内膜が女性 ホルモンの影響をうけて周期性変化(剥離と再生)を繰り返していること はシリーズ[1]でお示し致しました。この子宮内膜の組織が何らかの原 因で子宮内膜以外の場所にできる病気が子宮内膜症です。
このちがう場所にできた内膜の組織も本来の子宮内膜と同様に女性ホルモンの影響を受けて周期的に変化を繰り返して剥離をおこし出血します。しかし、月経の様に血液が出て行くところがないために、その場所にたまることになり、そのために月経時の下腹痛や腰痛が強くなり、卵巣にたまると、卵巣がはれてチョコレートのう腫と呼ばれるようになります。
また症状が進みますと周囲の臓器(膀胱や腸)や組織と癒着がおこり、不妊症の原因にもなることがあります。また、癒着のためにセックスの時に痛みを伴ったり、排便痛を訴えることがあります。原因にはいろいろな説がありますが、まだはっきりと解明されていません。
診断は問診、内診及びエコー検査にてわかりますが、CTやMRIにて 他の病気との鑑別もします。また、腫瘍マーカーという血液検査を参考にすることもあります。確定診断には直接、おなかの中を観察する腹腔鏡検査を施行し、病気の進行度も決定します。不妊症の人には原因と治療方針を決めるために、この検査をすることもあります。
[治 療] 薬物療法と手術療法があります。症状が軽く妊娠を希望しない人には対症療法として鎮痛剤や漢方薬で経過をみます。症状が強い人や子供がほしい人には主にホルモン剤による治療を行います。
点鼻薬、内服、注射などの方法がありますが、いずれのホルモン剤も卵胞ホルモン(エストロゲン)の分泌を抑えることによって一時的に閉経(月経のない)状態にして子宮内膜症の部位を萎縮させて治療するという方法です。4~6ヶ月間投薬しますが薬をやめたら再発することもあります。
薬で治らない人には手術療法で病巣部を切除したり、ゆ着をはがす手術をします。
【卵巣腫瘍】
正常の卵巣は親指の頭ぐらいの大きさです。腫瘍ができても小さいうちはほとんど症状がなく婦人科検診や妊娠の診断を受けるときに偶然みつかることが多いです。しかし、大きくなると腹痛や腰痛を起こしてきます。また、小さくても何かの原因で腫瘍がねじれると(茎捻転)激しい痛みがおこり、緊急に手術が必要なこともあります。腫瘍は中に水のようなものがたまっている良性のものがほとんどですが、悪性のものや、悪性に変化していく中間型のものがあります。
診断は内診やエコー検査でわかりますが、CTやMRI、腫瘍マーカー(血液検査による)で精査します。しかし、良性か悪性かの区別が困難な場合には手術をして腫瘍をとり出し、顕微鏡で調べる病理検査の結果により判断します。
小さくて良性と思われる場合は経過をみますが、私たちは腫瘍が7cm以上の場合は手術を勧めています。手術をする場合、若い人には良性なら腫瘍の部分だけを切除して、正常な部分はできるだけ残すようにします。もし片方の卵巣を摘出しても、もう一つの卵巣が残っていればホルモンについて心配をする必要はありません。悪性の場合には、両側の卵巣だけでなく、子宮も摘出することもあります。
何故、卵巣腫瘍ができるのか原因は不明ですが、定期検診を受けて早期発見し、大きくならないうちに治療することが大切です。
