§3 ライフサイクルで見た体のトラブル ~更年期
女性の心と体は、男性と違って女性ホルンの影響を受けて、いくつかの転機を経ながら節目のはっきりしたライフサイクルを形成し、その時期に応じて女性特有な生理現象、病気が起こりやすいという特徴があります。「更年期」もその一つの転機にあたります。
ホルモンのバランスの乱れから、さまざまな障害が起こってきます。知識がないために苦しんでいる女性がたくさんおられます。子供達が性教育を受けるように更年期教育を受けて、自分の体に起こる変化を納得しておくことが大切で、更年期を上手に過ごすことで老年期にかかりやすい病気も予防することができます。閉経後の人生が30年以上も残っているのですから、その期間を美しく快適に生きられるよう勉強してください。

更年期には何が起こっているのでしょうか。成熟期の特徴は排卵を伴う規則的な月経周期があり、卵巣からエストロゲンとプロゲステロンが分泌されていました。この女性ホルモンを出す卵巣の機能が低下し始めると「更年期」がはじまります。
卵巣の機能の低下は早い人では37~38才で始まり、49~50才頃には月経がなくなる閉経を迎えます。「閉経」とは最後の月経から1年間、月経がない状態が続くことをいいます。閉経が近づきますと、月経異常がおこってきます。今まで平均28日前後であった月経周期が次第に短くなってきます。これは無排卵になったり、黄体の機能が低下し、黄体期(基礎体温の高温期)が短くなったりするためで、時々、だらだらと出血が続く「機能性出血」になることもあります。(月経が止まらないといって受診されることが多い。)この短くなった周期の後、今度は逆に月経周期が長くなり、2~3ヶ月あるいは半年に1度となり、やがて閉経を迎えます。閉経は加齢とともに脳の下垂体から出るホルモンに対し卵胞の反応が悪くなって成熟できなくなり、排卵がなくなるためと考えられます。
更年期は成熟期から老年期へと移行する過渡期にあたり、最も著しい変化は卵巣の衰えで女性ホルモンが急激に減少します。これはどの女性にも起こることです。しかし「更年期障害」はすべての女性に起こるわけではありません。
【更年期障害】
30代の後半から更年期特有の不快な症状を強く訴える人があります。期間も、短い人も長い間苦しむ人もあります。もちろん何も症状を訴えない人もありますが、ホルモンの変調によるだけでなく、個人の家庭環境、社会生活、 性格や遺伝的なものも影響しているようです。以下に述べるような症状が、一つだけでなく同時にいろいろな症状が出ることが多いので不定愁訴(しゅうそ)とよばれています。
| 自律神経系症状 | ほてり、のぼせ、顔の紅潮、発汗、冷え、動悸(ドキドキする) |
|---|---|
| 精神神経症状 | めまい、耳鳴り、頭痛、不安、不眠、イライラ感、ゆううつ感、 しびれ感、蟻走感(アリがはう感じ) |
| 運動器系症状 | 肩こり、関節痛、筋肉痛 |
| 消化器系症状 | 便秘、下痢、むかつき、食欲低下、腹部膨満感 |
| 皮膚・粘膜症状 | かゆみ、シミ、しわ、膀胱炎の様な症状、膣の乾燥、 外陰部のかゆみ、性交痛 |
性成熟期には卵巣だけでなく脳下垂体、甲状腺、副腎など内分泌器官とよばれる臓器からさまざまなホルモンが分泌されて体のバランスを保っています。そこへ更年期になって女性ホルモンが急激に減少しますと、それまで保たれていた、お互いの調和に乱れが生じ、自律神経の中枢に変調が起こり、不定愁訴がでてくると考えられています。皮膚、粘膜の症状はエストロゲンの減少によっておこります。また、女性にとって更年期は、ちょうど家庭環境が大きく変わる時期にあたります。子供に手がかからなくなる反面、生きがいを失ったような寂しさを感じたり(空の巣症候群)、夫が単身赴任をしたり、役職がついて忙しく、家庭での協力が得られなくなります。仕事をもっている女性にも役職がつき、ストレスが増えます。年令による容姿の変化や体力の衰えに対する自覚が加わって、自信を失ったり、孤独に陥ったりしやすくなります。
更年期は成人病(最近は生活習慣病と呼ばれます)が始まる時期と重なります。更年期障害と思っている症状の陰に高血圧、心臓病、うつ病などが隠れていることもあるので、まずほかの病気がないことを確認する必要があります。その上で、漢方薬療法、自律神経調整剤、精神安定剤などの薬物療法をおこないますが、もともとは卵巣の働きが低下してホルモンの分泌が減少したためにひき起こされた障害ですので、この少なくなったホルモンを足してあげて症状を良くしようとするホルモン補充療法(HRT)が注目されています。
HRTによる発癌性も問題視されていますが、寿命が永くなった女性が更年期以降を快適に過ごすため(QOL:生活の質の向上)の一つの手段として、短期間だけHRTを受けられることも選択肢の一つかと思います。
定期的に癌検診を受けることも忘れないで下さい。エストロゲンの低下によっておこる骨粗しょう症には効果があります。
