§5 心の病気

たちの感情には喜怒哀楽があり、気分が良い時も憂うつな時もあります。なんとなく「気分が晴れない」「やる気がでない」と落ち込むときがあっても、しばらくするとまた元気になるというのが普通ですが、何日もそんな気持ちが続き、家庭生活や社会生活にも支障をきたし、自分も苦しむようになる心の病気がうつ病です。

最近では、男性では10人に1人、女性では5人に1人くらいの割合で軽症のうつ病が報告され心のかぜひきといわれる位、身近な病気の一つと言えます。

うつ病の誘因には配偶者や親しい人との別れ、病気や事故、仕事や勉学での失敗といった生活上の悲しいストレスのみでなく、結婚、出産、入学、就職、昇進、転居など本来喜ぶべきことも発症のきっかけとなる場合もあります。 また、睡眠や食欲・感情をコントロールしている脳内の神経伝達物質も影響していると考えられています。

うつ病になりやすい人の性格は、まじめで几帳面、何事にも熱心で完ぺき主義、責任感や道徳感が強く、人に頼まれると嫌とは言えず気を使いすぎるといった要素が多く、融通がきかないというところもみられます。このようなタイプの人が日常生活の中で社会的・心理的な変化に直面するとストレスを解消できずに溜め込んでしまって、心身ともに疲れてしまい、自分を精神的に追い詰めて、ついには「うつ病」になりやすいと考えられます。


うつ病の9つの症状(うつ病診断基準による)

①抑うつ気分
一日中気分がふさぎこんでいる。「憂うつ」「悲しい」「何の希望もない」と考える。イライラ感が出てくることもある。

②興味や喜びの喪失
「楽しみを感じられない」これまで好きだったことに興味が持てなくなる。自分の世界に閉じこもる。

③食欲低下
食欲が落ちてきて、何を食べてもおいしく感じられなくなる。体重が落ちてくる。逆に食べ過ぎてしまうこともある。

④不眠
寝つきが悪くなる。夜中に目が覚めたり、朝早く目が覚めたりする。逆に起き上がるのがつらくて寝てばかりになることもある。

⑤精神運動の問題
他の人の目にもわかるほどに体の動きが悪くなる。口数が少なくなる。逆に身の置き所がなく落ち着かずに動き回るようになることもある。

⑥疲れやすさや気力の減退
体を使っていないのにひどく疲れる。着替えなど日常の動作も困難になる。何をする気もおきない。

⑦無価値感や罪責感
ほどんど根拠なく自分を責める。過去のささいなことを思い出して悩む。

⑧思考力・集中力の減退や決断困難
集中力が落ち、決断力が鈍る。記憶力の減退。仕事や学業の成績が落ちる。高齢者の場合ボケてきたようにみえることもある。

⑨死についての反復思考や自殺年慮・自殺企図
死ぬことを繰り返し考える。「自分がいなくなれば周囲が助かる」などと思う。

以上のうち、5つ以上(①か②のどちらかは必ず含む)が、同時に2週間以上続き、つらい気持ちになったり、生活に支障が出てきたりしている場合には、うつ病の可能性があります。


つ病では自殺が問題になることがあります。軽症でもその可能性は否定できません。最近うつ病は増加傾向がみられます。本人はもちろん家族や友人がうつ状態にはやく気がついて、精神療法と薬物療法を併用すると治ります。しかし、症状が完全に消失するのは2/3で、1/3位は慢性化するといわれています。また6割以上が再発するとされているので予防のため抗うつ薬を続けた方がよいとされています。 本人は「頑張ろう」と思っても頑張れずに苦しんでいるのですから、「頑張って」とか「しっかりして」といった言葉は、かえってうつ状態を深める逆効果になります。 うつ病の治療中、患者さんの気持ちが楽になるかどうかは周囲の人の接し方にもよります。仕事(家事)や学業を休み、ゆっくり休養できる環境を作ってあげてください。

性の社会進出が増え、ライフスタイルが変わり、20~30代にも慢性的なストレスがあり「うつ病」が増えています。また「更年期うつ病」や高齢化による「老年期うつ病」も増えてきています。 うつ病は身近な病気です。重症化や再発予防のためにも気になる症状が現れた場合には、はやめに受診することが大切です。 かかりつけ医に相談し、専門医の紹介を受けるのも良いでしょう。