さわやか高の原健康情報

2022.04.01

カテーテル・アブレーションにより 心不全コントロールが可能となった持続性心房細動の一例

はじめに

心房細動は臨床診療で遭遇するもっとも一般的な不整脈であり、心房細動の有病率は、年齢が進むにつれて上昇する。また、脳卒中、心筋梗塞、心不全、および死亡などの心血管有害事象のリスクと関連する。

わが国では日本循環器学会による疫学調査が行われ、2003年の定期健診の成績(40歳以上の住民健診および企業健診 63万0138人が対象)から、心房細動有病率は男女とも加齢とともに増加し、70歳代では男性 3.44%、女性 1.12%、80歳以上では男性 4.43%、女性 2.19% であった。

この成績をわが国の人口にあてはめて計算すると、2005年時点ではわが国で71.6 万人が心房細動を有すると推定されている 1) 。

また、高齢心房細動患者の診療上の問題点として、下記のようなことが考えられる。

自覚症状はあるものの、患者本人は加齢に伴うものとある程度許容してしまい、医療機関への受診が遅くなり、ひいては診療開始されるのも遅くなる。
2 高齢になると潜在的に洞機能不全や房室ブロックなどの徐脈性心疾患を合併していることがあり、心拍数コントロールのためにβ遮断薬を使用すると、徐脈が顕在化す
ることがある。
3 高齢になると腎機能障害を合併していることが多く、心不全を合併している症例に対して利尿剤投与を行うと腎機能のさらなる悪化をきたすことがある。
4 不整脈薬使用は催不整脈作用により致死的不整脈をきたすことがある。

カテーテル・アブレーションによる治療例

80歳代の男性で、高血圧症、慢性閉塞性肺疾患などにて近医通院加療中であった。2020年11月xx日の心電図検査にて心房細動を認めた(2020年8月x日の心電図検査では正常洞調律)。またその頃より労作時息切れや動悸の自覚もあった。12月x日の心電図検査でも心房細動であり抗凝固薬開始となる。同日施行したHolter心電図検査では終日心房細動を認め、さらに最長2.42秒の心停止も認めたため、精査加療目的にて当院紹介となる。

また過去のHolter心電図検査では2:1房室ブロックも認めていた。
当院初診時の心電図検査にても心拍数106/分の心房細動を認め(図1)、胸部レントゲン検査では心胸郭比56.16%と心拡大を認め(図2)、さらに血液検査ではBNP値が145.2pg/mLと高値であっ
た。以上より、頻脈性の心房細動のために心不全を合併している状態と考えられた。

まず少量のループ利尿薬(フロセミド10mg)とβ遮断薬( ビソプロロール0.625mg)内服を開始したが、心拍数の減少・BNPの低下を認めず、労作時息切れや動悸といった自覚症状の改善もなかった。
このためカテーテル・アブレーションによる治療を行うこととした。

心エコー検査では、軽度の左房拡大は認めるものの、左室収縮率は正常であった。
心臓CTでは左房・左心耳に明らかな血栓像を認めず、冠動脈に有意狭窄を認めなかった。

2021年3月8日にカテーテル・アブレーションを施行した。
拡大肺静脈隔離に加えて、左房後壁隔離・心房内線状アブレーション・冠静脈洞隔離・上大静脈隔離を施行した。以後は現在に至るまで洞調律を維持しており(図3)、胸部レントゲンでは心
拡大も改善した(図4)。

血液検査でもカテーテル・アブレーション前には201.6pg/mLまで上昇していたBNP値は、アブレーション後は50pg/mL前後を推移するまで改善し、自覚症状も消失した(表1)

まとめ

カテーテル・アブレーションにより、心不全コントロールが可能となった高齢持続性心房細動の症例を報告した。

高齢患者は、症状が自覚されにくく、併存疾患のために投薬治療が困難になることをしばしば経験する。侵襲的治療により病状が改善する症例があることを認識しながら、日常診療にあたることが大切と考えられた。

カテーテル・アブレーションは年々件数が増加

高の原中央病院循環器内科では、2019年よりカテーテル・アブレーションを開始しており、年々件数が増加しています。


2022年1月より不整脈専門の常勤医も勤務開始となる予定です。
循環器を専門とする医師による夜間・休日の日当直を行っており、2021年11月からは24時間365日切れ目なく迅速に循環器救急に対応できるようになりました。

緊急症例が増加しているため、冠動脈疾患に対するカテーテル治療件数も増加しており、1室の血管造影室では対応しきれなくなったため、2021年5月より血管造影室も増設しております。

今後も、地域の循環器疾患患者様により良い医療を提供できるように尽力してまいります。

高の原中央病院 循環器内科
部長 片岡 一明

【引用文献】
1). Inoue H, Fujiki A, Origasa H, et al. Prevalence of atrial fibrillation in the general population of Japan: an analysis based on periodic health examination. Int J Cardiol 2009; 137: 102–107.
2). 日本循環器学会,日本不整脈心電学会.不整脈非薬物治療ガイドライン(2018年改訂版).